3分でわかる!パワーリフティングのディロードについて詳しく解説

パワーリフティングのトレーニングにおいて、常に限界まで重量を追い求め続けることは不可能です。強くなるためには、あえて強度を落とす「ディロード」の活用が不可欠です。
本記事では、ディロードの重要性から具体的な実践方法、食事の管理まで徹底的に解説します。

パワーリフティングのディロードとは?

ディロードとは、トレーニングの強度(重量)やボリューム(セット数・回数)を一定期間意図的に減らすことで、蓄積した疲労を取り除き、身体の適応(超回復)を促進させるプロセスを指します。

パワーリフティングでは、高重量による神経系の疲労や関節への負担が大きいため、定期的なディロードを取り入れないと、オーバートレーニングに陥り、挙上重量の停滞や怪我を招くリスクが高まります。

ディロードの具体的なやり方と目安

ディロードはただ休むのではなく、「身体を動かしながら回復させる」のが一般的です。

ディロードの目安

ディロードを行うべきサインを見逃さないことが大切です。
以下の項目に当てはまる場合は、ディロードを検討しましょう。

  • 以前は挙がっていた重量が重く感じる。
  • 関節(膝、腰、肘など)に違和感や痛みがある。
  • 睡眠の質が低下している、または寝ても疲れが取れない。
  • トレーニングに対するモチベーションが著しく低下している。

ディロードの頻度・タイミング・期間の決め方

ディロードの頻度

一般的には4週間〜8週間に1回が目安です。

  • 初級者: 8〜12週間ごと(回復力が早いため)。
  • 中・上級者: 4〜6週間ごと(扱う重量が重く、神経系の疲労が大きいため)。

ディロードのタイミング

最も効果的なのは、「ピーキングプログラムの終了後」「試合終了後」、または「メインセットの挙上スピードがあからさまに落ちた時」です。

また、仕事や私生活が忙しく、回復にリソースを割けない時期に戦略的にぶつけるのも賢い選択です。

ディロードの期間

通常は1週間(7日間)を1サイクルとします。
疲労が非常に激しい場合は10日間ほど取ることもありますが、1週間あればほとんどの場合、神経系と関節の回復には十分です。

ディロード期間の重量設定とトレーニングボリュームの管理

ディロード期間の重量設定

もっとも一般的な基準は、「通常時の強度の50%〜60%」に設定することです。

  • 普段 100kg でセットを組んでいる場合、50kg〜60kg で行います。
  • RPE(自覚的運動強度)で表すと、RPE 5〜6程度に抑えます。

ディロード期間のトレーニング

重量だけでなく、「ボリューム(セット数)」も普段の半分程度に減らします。

  • メイン種目: フォームの確認に徹する。
  • 補助種目: 種目数を減らすか、完全にカットする。
  • 意識すること: 筋肉を追い込むのではなく、血流を促進させて老廃物を流し、関節を休める感覚で行ってください。

ディロード期間中の食事のポイント

「動かないから食べない」のは間違いです。

  • 摂取カロリー: メンテナンスカロリー(現状維持のカロリー)を死守します。減量(アンダーカロリー)にしてしまうと、組織の修復が進みません。
  • タンパク質: 筋肉の合成を維持するため、通常通り体重1kgあたり2g程度を摂取します。
  • 炭水化物: グリコーゲンの充填のためにしっかりと摂取しましょう。

ディロードの種類:アクティブレスト vs 完全休養

多くのパワーリフターには、「アクティブ・ディロード(低強度でのトレーニング)」を推奨します。
完全に休んでしまうと、ディロード明けに神経系が「眠った」状態になり、高重量への感覚が狂いやすいためです。

【実践編】ディロード重量・ボリューム算出ガイド

ディロード期間中に「どれくらいの重さで、何回やるべきか」を迷わないための具体的な基準表です。ご自身の現在の1RM(最大挙上重量)を当てはめて計算してみてください。

ディロード設定の計算式

パワーリフティングにおける標準的なディロード設定は以下の通りです。

  • 重量(強度): 1RMの 50%〜60%
  • セット数: 通常時の 50%(例:普段4セットなら2セット)
  • レップ数(回数): 通常時の 50%〜60%(例:普段8回なら4〜5回)

ディロード自動算出・早見表

以下は、1RM(最大挙上重量)ごとのディロード実施例です。

1RM(最大重量)ディロード時の重量 (50-60%)セット・レップ数の目安
100kg50kg 〜 60kg2〜3セット × 4〜5回
140kg70kg 〜 85kg2〜3セット × 4〜5回
180kg90kg 〜 110kg2〜3セット × 4〜5回
220kg110kg 〜 130kg2〜3セット × 4〜5回
260kg130kg 〜 155kg2〜3セット × 4〜5回

「軽すぎる」と感じるかもしれませんが、それで正解です。
ディロードの目的は筋肉に刺激を与えることではなく、「フォームの軌道を確認しながら、血流を促して疲労を抜くこと」にあります。

1週間のディロード・ルーティン例

普段週4回トレーニングしているリフター向けの、具体的なメニュー構成案です。

曜日内容意識するポイント
スクワット Dayメイン重量の50%でフォーム確認。補助種目はカット。
ベンチプレス Day肩周りの動的ストレッチを念入りに行い、低重量で実施。
オフ(完全休養)軽い散歩やストレッチのみ。
デッドリフト Day腹圧の入れ方を再確認。セット数は最小限に。
オフ(完全休養)睡眠時間を1〜2時間増やす意識を持つ。
全身・調整 Day3種目を非常に軽い重量で触り、動作の最終確認。
オフ(完全休養)翌週からの高強度に備え、エネルギーを蓄える。

ディロード中の「体感」の目安(RPEの活用)

重量で計算するのが難しい場合は、RPE(自覚的運動強度)を活用しましょう。

  • 通常トレーニング:RPE 8〜9(あと1〜2回挙がる限界付近)
  • ディロード:RPE 4〜5(あと5〜6回は余裕で挙がる、かなり軽い状態)

「あと数回やりたい」という気持ちをグッと抑えてジムを後にすることが、ディロードを成功させるコツです。

ピーキングプログラムとディロードの関係性

ピーキングとディロードは、「緊張(ピーキング)」と「緩和(ディロード)」の関係です。

  1. ピーキングで身体に強いストレスを与え、強くなるためのきっかけを作る。
  2. ディロードでそのストレスから回復させ、実際の挙上重量として結実させる。

この連動がうまくいくと、試合当日に「身体が驚くほど軽い」「重さを感じない」という最高の状態(ピーク)を迎えることができます。

パワーリフティングのプログラムとは?

パワーリフティングのプログラムは、単なる「筋トレメニュー」ではなく、「特定の期日に向けて能力を積み上げていく設計図」です。

一般的には「期分け(ピリオダイゼーション)」という考え方に基づき、以下の3つのフェーズを数ヶ月かけて移行します。

フェーズ目的特徴
筋肥大期 (Hypertrophy)土台となる筋肉量を増やす低重量・高ボリューム(8〜12回)
筋力期 (Strength)筋肉を動かす神経系を鍛える中重量・中ボリューム(3〜6回)
ピーキング期 (Peaking)1発の最大挙上重量に特化させる高重量・低ボリューム(1〜3回)

ピーキングプログラムとは?

パワーリフティングにおけるピーキングプログラムは、試合当日に自分の持てる最大筋力を100%(あるいはそれ以上)発揮させるための最終調整フェーズです。
「ただ重いものを持つ」のではなく、疲労とパフォーマンスの関係を科学的にコントロールする技術が求められます。

疲労を抜いてパフォーマンスを最大化する(フィットネス疲労理論)

ピーキングを理解する上で最も重要なのが「フィットネス疲労理論」です。

パフォーマンス = フィットネス(能力) − 疲労

  • フィットネス: トレーニングによって得られた筋力や技術。
  • 疲労: 激しい練習で蓄積した肉体的・精神的な疲れ。

試合直前は、ハードな練習により「フィットネス」も高いですが、「疲労」も最大値に達しています。
ピーキングの目的は、「フィットネスを維持しつつ、疲労だけを急激に取り除く」ことで、隠れていた真のパフォーマンスを表に出すことにあります。

試合前の「テーパリング」としてのディロード

ピーキングとディロードは、パワーリフティングの計画において「対(ペア)」になる概念であり、その関係を一言で言えば「ディロードはピーキングを完成させるための最後のピース」です。

この2つを別個のトピックとしてではなく、連続した一つのプロセスとして理解することが重要です。

ピーキングとディロードの構造的な関係

パワーリフティングのプログラム全体で見ると、ディロードはピーキングという大きなフェーズの「最終段階(フィナーレ)」に位置づけられます。

  • ピーキング(3〜4週間)
    • 高重量に身体を慣らし、技術的な精度を極限まで高める「調整期間」
  • ディロード(試合前1週間)
    • ピーキングで蓄積した最後の疲労を抜き、爆発力を解放する「仕上げ期間」

つまり、「ディロードのないピーキングは、疲労でガス欠を起こし、ピーキングのないディロードは、ただ身体がなまるだけ」という関係性です。

フィットネス疲労理論での役割

前述の「フィットネスー疲労理論」に当てはめると、両者の役割の違いが明確になります。

フェーズフィットネス(能力)疲労(ダメージ)結果(パフォーマンス)
ピーキング中最大化される蓄積される疲労に隠れて見えない
ディロード中微減・維持される急激に減少する一気に向上する(ピーキングの成功)

ピーキングの後半(試合1〜2週間前)は、人生で最も重い重量を扱っているため、身体はボロボロの状態です。
このタイミングで戦略的なディロード(テーパリング)を挟むことで、蓄積された疲労の霧が晴れ、研ぎ澄まされた筋力が表面化します。
これを「スーパーコンペンセーション(超回復)」と呼びます。

ピーキングにおける「ディロードの質」の変化

通常のトレーニングサイクル(筋肥大期や筋力期)で行うディロードと、ピーキングの最後に行うディロードでは、その目的とやり方が少し異なります。

通常のディロード
  • 目的: 蓄積疲労のリセット。次のサイクルへ向けて心身を休める。
  • 方法: 重量もボリュームも大幅に落とす(50〜60% 1RM程度)。
ピーキング最終週のディロード(テーパリング)
  • 目的: 「重さの感覚」を維持しつつ、疲労だけを抜く。
  • 方法: 強度はあまり落とさず、ボリューム(セット数・回数)を極端に落とす。
    • 例:試合の3日前まで、試合の第1試技に近い重量を1回だけ触る(シングル)。
    • これにより、神経系をアクティブに保ったまま、筋肉と関節の回復を待ちます。

なぜ「ピーキング明け」にもディロードが必要か

試合(ピーキングの頂点)が終わった直後も、必ずディロードが必要です。
試合は肉体的な限界だけでなく、アドレナリンによる精神的・神経的な消耗が激しいため、試合後の1〜2週間を「アクティブ・リカバリー(積極的休養)」に充てることで、次の長期プログラムにスムーズに移行できます。

ディロード明けに注意すること

ディロードが終わった直後のトレーニングでは、以下の点に注意してください。

  1. いきなりMAXに挑戦しない
    • 身体は回復していますが、重い重量に対する「感覚」が少し鈍っていることがあります。
    • 1週目は通常の80〜90%程度の負荷から徐々に感覚を戻しましょう。
  2. フォームの変化を確認する
    • 疲労が抜けたことで、以前よりスムーズに動けるはずです。良い感覚を定着させるチャンスです。
  3. 過剰なボリュームを避ける:
    • 身体が軽く感じても、いきなりセット数を増やしすぎないよう注意しましょう。急激に負荷を戻すと、ディロードで解消したはずの疲労が即座に再蓄積してしまい、次のピークを作るための余力がなくなってしまいます。

ディロードに関してよくある質問(FAQ)

ディロードを取り入れる際、多くのリフターが疑問に思うポイントをQ&A形式でまとめました。

Q1. ディロード中に筋肉が落ちたり、弱くなったりしませんか?

A1. 1週間程度のディロードで筋肉が落ちることはありません。 むしろ、筋肉の修復が進み、グリコーゲン(エネルギー源)が充填されるため、ディロード明けには以前よりも出力が向上するケースがほとんどです。筋肉の減少(萎縮)が始まるのは、トレーニングを完全に2〜3週間以上休止した場合といわれています。ディロードは「弱くなる期間」ではなく「強く戻るための準備期間」と捉えましょう。

Q2. ディロード期間中に有酸素運動をやってもいいですか?

A2. 散歩や軽いサイクリング程度のアクティブリカバリー(積極的休養)なら、むしろ推奨されます。 低強度の運動は血流を促進し、疲労物質の除去を早めてくれます。ただし、息が切れるような激しいランニングやHIIT(高強度インターバルトレーニング)などは、関節や神経系に負担をかけ、回復を妨げる可能性があるため避けましょう。

Q3. 「今週は調子がいい」と感じても、計画通りディロードすべきですか?

A3. 原則として、計画通りに実施することをおすすめします。 パワーリフティングの疲労、特に神経系や関節の疲労は「自覚症状が出る一歩手前」で蓄積していることが多いからです。調子が良い時にディロードを行うことで、その好調な状態をさらに高いレベルで維持し、怪我のリスクを未然に防ぐことができます。

Q4. 完全に1週間ジムを休む「完全休養」でも大丈夫ですか?

A4. 可能ですが、パワーリフターには「アクティブ・ディロード」がより適しています。 完全休養にすると、高重量を扱う際の「バーベルの重さの感覚」や「動作の連動性」が鈍ってしまう(デスキル現象)ことがあるからです。重量を50%程度に落としてフォームを確認する程度に動いたほうが、ディロード明けのパフォーマンス復帰がスムーズになります。

Q5. ディロード中にサプリメントは変えるべきですか?

A5. 基本的には通常通りで問題ありませんが、クレアチンやマルチビタミンは継続しましょう。 身体の修復プロセスを止めないために、タンパク質(プロテイン)や微量栄養素の摂取は維持してください。一方で、プレワークアウトサプリメント(カフェイン等)の使用を控えることで、中枢神経系を刺激から解放し、カフェイン耐性をリセットする良い機会にすることができます。

まとめ

ディロードは「サボり」ではなく、「強くなるための攻めの休息」です。
自分の身体の声を聴き、計画的にディロードを取り入れることで、怪我を防ぎながら長期的に記録を伸ばし続けることができます。

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