ベンチプレスで停滞もしくはピークアウトした時のトレーニング方法

著作者:fabrikasimf/出典:Freepik

ベンチプレスの記録の停滞は、トレーニングを熱心に行っている多くのパワーリフター、ベンチプレッサーが経験する自然な現象です。

身体の疲労、身体が同じ刺激に慣れてしまう、あるいは、潜在的な弱点がボトルネックになることで起こります。

焦らずに原因を分析し、トレーニングに変化を加えることで、この停滞期を乗り越え、さらなる成長へと繋げることができます。

ここでは、そのための具体的な方法を紹介します。

①まずは原因を分析しよう

やみくもにトレーニング量を増やす前に、なぜ記録が停滞しているのか、原因を探ることが重要です。

主な原因として、以下の4つが考えられます。

  1. フォームの乱れ
    • 高重量を扱ううちに、気づかないうちにフォームが崩れているケースがあります。本来使われるべき筋肉に負荷が乗らず、力の伝達が非効率になっている可能性があります。
  2. トレーニングのマンネリ化
    • 毎回同じ重量、同じレップ数、同じ種目を繰り返していると、身体がその刺激に慣れてしまい、成長が止まってしまいます。
  3. 特定の筋肉の弱さ
    • ベンチプレスは主に大胸筋、上腕三頭筋、三角筋前部を使いますが、動作を安定させる背中(広背筋、僧帽筋)や、体幹、脚の力が弱いと、高重量を支えきれず頭打ちになります。
  4. 回復不足(オーバートレーニング)
    • 「もっと強くなりたい」と焦るあまり、トレーニングのやりすぎで疲労が抜けず、かえってパフォーマンスが低下している状態です。十分な栄養と休養が取れていないことも原因となります。

②停滞を打破するトレーニング方法

原因のあたりがついたら、以下の方法を試してみましょう。

複数を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。


1.フォームの見直し

一度、扱う重量を思い切って下げ(最大重量の50〜60%程度)、完璧なフォームを再確認することから始めましょう。

チェックポイント:

  • 5点の接地
    • 頭、両肩、お尻、両足裏がしっかりとベンチや床についているか?
  • 肩甲骨の内転・下制
    • 肩甲骨をしっかりと寄せて下げ、胸を高く「アーチ」が作れているか?これにより肩の怪我を防ぎ、大胸筋を使いやすくなります。
  • 足の踏ん張り(レッグドライブ)
    • 足で床を蹴るように力を入れることで、全身のパワーをバーベルに伝えられます。
  • バーの軌道
    • バーを胸のみぞおちの少し上あたりに下ろし、押し上げる際はやや斜め上(肩の方向)に挙げる。
  • 脇の角度
    • 脇を開きすぎず(約45〜75度)、肩への負担を減らし、効率的に力を発揮できる角度を見つける。
  • 手首
    • 手首を寝かせず、前腕と一直線になるように立てる。

自分のフォームを撮影し、客観的に分析するのも非常に有効です。

2.トレーニングプログラムの変更

身体に新しい刺激を与えるために、プログラムに変化を加えましょう。

ピリオダイゼーション(期分け)の導入

目的別に期間を区切り、トレーニング内容を周期的に変化させる方法です。

筋肉と神経系を計画的に刺激し、長期的な成長を促します。

簡単なモデル例(12週間サイクル)

  • 第1〜4週(筋肥大期):
    • 中重量・中〜高回数(8〜12回 × 3〜4セット)で、筋肉のサイズアップを目指す。
  • 第5〜8週(筋力向上期)
    • 高重量・低回数(3〜6回 × 4〜5セット)で、最大筋力を高める。
  • 第9〜11週(ピーキング期)
    • さらに高重量・超低回数(1〜3回 × 1〜3セット)で、神経系を最大出力に慣れさせる。
  • 第12週(積極的休養)
    • 重量とボリュームを大きく落とし、身体を回復させる。
トレーニング変数の調整
  • レップ数とセット数
    • いつも8〜10回で組んでいるなら、5回×5セットの高重量に挑戦したり、15〜20回の高回数で刺激を変えてみる。
  • インターバル
    • セット間の休憩時間を短くする(例: 60秒→30秒)ことで、筋持久力への刺激を高める。
  • 動作のテンポ
    • 特にネガティブ動作(バーを下ろす時)を3〜4秒かけてゆっくり行うことで、筋肉に強烈な負荷と刺激を与えることができます。

3.補助種目の戦略的な導入

ベンチプレスでつまずく箇所(スティッキングポイント)によって、あなたの弱点が見えてきます。

その弱点を克服するための補助種目を取り入れましょう。

つまずく箇所考えられる弱点おすすめの補助種目
ボトム(胸の近く)で潰れる大胸筋の筋力不足ポーズベンチプレス: バーを胸の上で1〜2秒静止させてから挙げる。
ダンベルプレス: 可動域が広がり、大胸筋をストレッチさせやすい。
足上げベンチプレス: 脚の力が使えないため、上半身の純粋な筋力が鍛えられる。
中間〜フィニッシュで失速する上腕三頭筋の筋力不足ナローグリップベンチプレス: 手幅を狭めて行い、三頭筋への刺激を増やす。
ディップス: 上半身のスクワットとも呼ばれ、押す力を総合的に強化。
フロアプレス: 床に寝て行い、可動域を制限することで三頭筋を集中して鍛える。
全体的に不安定・フォームが崩れる背中・体幹の弱さベントオーバーロウ: ベンチプレスと拮抗する背中の筋肉を鍛え、土台を安定させる。
懸垂(チンニング): 広背筋を強化し、安定したアーチ作りを助ける。

4.回復と栄養の最適化

見落とされがちですが、トレーニングと同じくらい「回復」が重要です。

筋肉はトレーニング中に破壊され、回復する過程でより強く大きくなります。

  • 十分な睡眠
    • 最低でも7時間以上の質の良い睡眠を心がけましょう。成長ホルモンは睡眠中に最も多く分泌されます。
  • 栄養補給
    • 特にトレーニング後のタンパク質と炭水化物の摂取は必須です。体重1kgあたり1.5〜2gのタンパク質を目安に、バランスの取れた食事を心がけましょう。
  • 休養日の設定
    • 週に2〜3日は完全な休養日を設けるか、ストレッチやウォーキングなどの軽い運動で血流を促すアクティブレスト(積極的休養)を取り入れましょう。

まとめ

ベンチプレスの停滞は、次のレベルへ進むためのサインです。

焦らず、この記事で紹介した方法を一つずつ試してみてください。

  1. フォームを見直す
  2. プログラムに変化を加える
  3. 弱点を補強する
  4. しっかりと休む

これらのアプローチを組み合わせ、長期的な視点でトレーニングに取り組むことで、必ず停滞を打ち破り、自己ベストを更新できるはずです。

もし可能であれば、経験豊富なトレーナーにフォームチェックやプログラム相談をすることも、非常に有効な手段です。

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